祝宴に欠かせない生牡蠣の産地、 大西洋側アルカション湾では、 グルメ・ツーリズムが大人気!

  12月は季節柄、祝宴に花を添える高級食材が市場に登場し更に華やかだ。クリスマスや年末の大晦日の食卓の人気者は、世界三代珍味のフォア・グラ、スモー ク・サーモン、シャポンと呼ぶ去勢した鶏のロースト、そして、新鮮な生牡蠣や海の幸の盛り合わせ・・・といったところが定番だ。国内で約10万トン (2011-2012年仏貝類養殖業組合発表)の生産量がある牡蠣は、魚屋や専門店のエカイエ(牡蠣あけ師)に開けてもらい丸盆のようなプラトーに並べら れた状態で家に持ち帰ったり、産地で詰められたブーリッシュと呼ばれる薄い板を編んで作った軽い籠単位で購入し、開けては食べるパーティーで大量に食べる 場面に出会うのも珍しいことではない。

  赤ワインで有名なボルドーから約1時間ほど大西洋に向かうと、牡蠣の養殖で有名なアルカション湾がある。国の海洋公園に指定されている435km2を含む 10の村で囲まれた湾の楽しみ方は様々。フランスに40あるグランド・シット(偉大なるランドマーク)の一つ、カップ・フェレ半島にはピラ砂丘、鳥の島な ど自然保護地区も多く、世界的に有名な鳥類学自然公園、アルガン礁国立公園などの自然派ツーリズム、そして、年間8000トンを生産する約780ヘクター ルの占める牡蠣養をテロワール(当地の味)とし、グルメ・ツーリズムが2010年に発足。観光客誘致に成功している。

  オイスター・ロードと名付けられた牡蠣生産地を結ぶ地域には、約350の牡蠣生産業者がある。牡蠣を出荷する準備をする小さな工場付近に建てられた81の 牡蠣小屋の一部は、新鮮な牡蠣を食べられるオイスター・バー&レストランになっており、地元の人はもちろん、観光客のお目当てとなっている。こ の、地域を支える牡蠣生産の文化を知るには、牡蠣生産者の平たい船に乗せてもらい、牡蠣養殖場まで行って、季節によっては船上で試食もできる観光ツアーに 参加すると良い(問い合わせはアルカション観光局へhttp://www.arcachon.com)。

 

  海水の温度が10度を超える春がやってくると、牡蠣は配偶子を作り出し、水温22度ほどの夏になり放たれ海水の中で受精され、稚貝となる。それを付着させ る《保育園》は、石灰を塗った瓦を交互に積んだもの。19世紀からアルカションで引き継がれる方法だそうだ。日本の養殖方法とは、かなり異なる。湾内には 森のように、養殖台の軸に成る柱が無数に打ち込んである。これは牡蠣が入れた金属網の袋を載せる台を支える柱だ。養殖場までは底の平たい特殊な専用船で沖 に出る。牡蠣の入った網袋は、引き潮に成らないと姿を現さないほど地面に近い高さで並べてある。養殖業者は、繰り返される潮の満ち引き、温度、水質を見な がら、袋の中の牡蠣全てが健全に育つように中身を入れ替えたり、袋の位置などを変えたりしつつ成熟させる。そして1、2年後、成長した牡蠣は牡蠣小屋にある浄化層を経 て、重さで決められた番号毎に販売、直売される。

  アルカションを含めて、フランスで生産される牡蠣のほとんどは、厚みのある日本のマガキであることはかなり有名な話だ。1960年代の病害で壊滅的被害は 発生した際、病気に強い種類として、牡蠣生産業を立て直すために輸入されたのが日本のマガキだったからだ。この話とともに、3、11の大津波で壊滅した東 北地方を大きくサポートしたOKAESHI – PROJECTお返しプロジェクトと呼ばれる復旧支援が立ちあがり、いち早く復興に役立つ物資や資金が届いたという心温まる話が伝わったのは2011年夏 だった。

  取材時はオフシーズンだったため、牡蠣小屋ではなく街のレストラン「ラ・ゲラニエール」で、見学したばかりのラバン社の3番牡蠣を前菜に頂いた(写真)。フランスの牡蠣はそれぞれ海が、季節が、そのまま味わいになる食材で、奥が深い。この時、他の地方では珍しい付けあわせ、暖かいソーセージが付いてきたので驚いたところ、ボルドーやアルカ ション湾あたりの地方では、豚肉を使った田舎風パテやクレピネット(網脂)と呼ばれるクレピットで包んだ小さなソーセージと一緒に生牡蠣を味わう習慣があ ると聞かされた。特に、後者はクリスマスのご馳走に添えられるものだそう。なるほど、赤ワインの産地に近いので、納得の食習慣と言える。クリスマスも間近 になり、アルカションのご家庭では、おばあちゃんのクレピットのレシピを引き出しから出している頃だろう。

 

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