3つのホールを持つフィルハーモニー・ド・パリがあるパリ東部、ラ・ヴィレットに対抗するかのように、
パリ西部のオート・ド・セーヌ地方が文化開発プロジェクトを推進。
このほど、セーブル橋付近、セーヌ川の中洲であるセガン島に« ラ・セーヌ・ミュージカル »が完成した。
この2017年4月21日には、こけら落としとして、ノーベル文学賞受賞でも話題を呼んだボブ・ディランのコンサートが開かれる。
18世紀にこの島を買った科学者セガン氏の名前が付いているセガン島だが、19世紀フランス工業を代表する元ルノー自動車工場として人々の記憶に残るアドレスだ。メトロ9番線終点、ポン・デ・セーブルから徒歩数分、当時3000人の工員が毎日渡ったルノー橋を越え、コンクリートの船に丸い編みをすえたような新生セガン島に足を踏み入れた。
1992年に工場が閉鎖されてからは開発計画は二転三転。安藤忠雄氏の設計でピノー財団の現代美術館の計画もあったが、難航のうえ、白紙に。2010年にブローニュ・ビヤンクール市から1ユーロという値段でオート・ド・セーヌ地方に売り渡しされ、25万5000m2を使った開発プロジェクトがPFI手法(民間投資公共事業)の形で、再スタートを切った。
全体のプロジェクトのコンサルタントは建築家ジャン・ヌーベル氏が担当、ランドマークとなる« ラ・セーヌ・ミュージカル »は、36500m2を使い、坂茂氏とジャン・デ・ギャスティン事務所が担当した。坂茂氏によるフランス東部、メッスにあるポンピドゥー・センター別館にも使われた、木製の編笠のような木組み技術が、ここにも採用されている。丸い建物の周りには、太陽の動きに合わせて移動する800m2のソーラーパネルが設置されており、消費する電力の一部を自家発電するエコな建物になっている。
ありとあらゆる音楽に適するという多目的コンサートホールは、椅子の並べ方、立ち見席のスペース構成を変えることができ、4000から6000人収容可能。もちろん、オーケストラボックス、演劇、オペラに合わせて舞台と舞台周りの高さも変えられるようになっている。アコースティック音楽には、1150 人収容のオーディオトリウムを使いたい。パリの主なコンサートホールを軒並み担当する永田音響と、ジャン-ポール・ラムルー氏が担当したとあって、音響は最高だ。
質の高い音楽を体験できる素敵な島に生まれ変わったセガン島。これからのパリ西部のメタモルフォーズも楽しみになってきた。
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