フランス人は労使関係の交渉する時、あるいは政策や政策案に反対意思を示すために、必ずデモ行進やストライキをする。19世紀産業革命後に「労働者が団結して意見する」方法として生まれたストライキは、当初は禁止され、犯罪扱いされたが、後に犯罪扱いは免れたが、労働法破棄行為とみなされた。1964年になって、ストライキを労働者(軍人、国家憲兵など一部を除く公務員も含む)の権利とする法律が成立した。ストライキをするのは労働組合毎、または組合員でなくとも、ストライキに参加、多数が同時に行動することで、対経営者の交渉力を強める結果になるが、ストライキをした分の減給は覚悟の上だ。一方、経営者は、ストライキ前にその要求内容の提示を受け、ある日時までに解決策を提示できなければ、やむおえず、ストライキを認めなければならない。そして、ストライキに参加した労働者をむやみに解雇したり、会社や工場を閉鎖することは禁止されている。しかも、一般市民に影響が直接出る公共交通機関のストライキについて最低限の運行を義務づける法律が2007年に成立し、現在は、1995年の様な、交通完全マヒは絶対に起きない国に変わった。
1995年の場合は・・・当時のジュペ首相が、財政赤字削減を目的に、社会保障制度改革案を策定、議会に提出し、下院で11月16日に改革案が通過した。これは、労働者への増税、年金受領に必要な労働年数を引き伸ばす、などの内容で、その後交渉が始まった国鉄職員らもそれに反対。11月24日から、国鉄(SNCF)、パリ交通公団(RATP)、フランス電力公社(EDF)、郵便局、フランステレコムが参加したゼネストが始まり、パリの交通は完全に麻痺。全国の学生も、このストライキに賛同し、行動の不便を強いられながらもパリ市民の支持率は50パーセントを超えていた。12月5日、大都市だけでなく全国に広まったデモ行進では、あらゆる職業の労働者に加え、失業者、学生、年金受給者も、それに政治家や有識者が加わり、文字どおり国民が一丸となって政府に不満を表した。ゼネストは極寒の中、12月18日まで続き、ストライキ史上に残る記録となった。パリジャンたちは、約1ヶ月を同僚や友人と相乗り自家用車で、またはヒッチハイク、渋滞するパリを横目にセーヌ川のバトービュスで通勤したりして対処。ソリダリティー精神で、ストライキに協力した。結果、政府が政策内容を大幅に変更することを発表し、ストライキはクリスマス前にようやく終わった。
この教訓が、先に述べた公共交通機関ストライキ時における最低限の運行確保を保証する法律の成立となったのだ。加えて、ストライキに参加する労働者はその旨を2日前以上前に明示が義務づけられ、これによってストライキをしない労働者で二日後の運行計画を立てる時間が確保されたわけだ。そして、ストライキが8日を超える場合は、経営者を含めた従業員全員に無記述投票で続行を可決する投票をすることが可能になった。
しかし今回、国鉄が予定しているストライキは利用者にとって大変難儀。労働組合のCGT、UNSA、CFDTが結束し、マクロン政府の打ち出している国鉄改革法案に反対を表明するもので、2018年4月3日から、二日間スト+三日間スト解除(平常運行)という5日サイクルで、6月28日まで繰り返される。しかも、ストは通常、前日の19時から始まり、翌日の8時までので、前後日も注意が必要だ。初日の3日は、 77%の運転手がストライキに参加、 TGVは12% 、パリ郊外を走るトランシリアンは28% しか運行されない予定だという。
これに対し、国鉄の社長は「ストライキの日は、予約を取り消すことをオススメする」なんて、言っているが、数ヶ月前からフランス旅行を予定をしていた人にとって、多いに不安材料ではないかと思う。ここでは、
=ストライキの日にどう備えるか?
=自分が買った切符の列車が欠便になったら?
について、まとめて見たいので、参考にして欲しい。
====== ストライキの日にどう備えるか?
ストライキの日でも、最低のサービス、つまり運行する便はあるので、それを確認したい。ニュースでは、「TGVは、何本に一本(あるいは%)」と言った形で発表されるのみだからだ。
まず、
国鉄運行インフォメーションで次のストライキが何時から何時までという情報(情報が正確に反映されるのは、前日の17時以降)を得よう。
https://www.sncf.com/fr/itineraire-reservation/info-trafic/gl
TGV テージェヴェール か、従来線特急列車の INTERCITEアンテルシテなら Grannds Lignes を選択、
地域圏急行列車 TER テーウーエール なら
TER を。
運行される列車を確認するには、
このページに、出発駅、到着駅、利用したい日にちを (二番目の Partir à を選択して )
入力すると時刻表が現れる。
https://www.sncf.com/fr/itineraire-reservation/itineraire
自分の列車が運行されるかどうかを知るには、切符に書いてある列車番号を
以下のサイトに入力する。
https://www.sncf.com/fr/itineraire-reservation/recherche-numero-train
パリ近郊、パリに乗り入れる Transilien トランシリアンなら、
https://www.sncf.com/fr/itineraire-reservation/info-trafic/gl
Ile -de – France で、トランシリアンのページに行くか、
ダイレクトに、このページへ。
https://www.transilien.com/#info-trafic-temps-reel
これに、出発駅、到着駅、利用したい日時を入力するか、
L’INFO TRAFIC(運行インフォメーション)の下にある 利用する線のアイコン(Aから E線の高速郊外線RERか、 H からU線の郊外列車 TRAIN、あるいはパリの郊外を結ぶトラム )を選択すると、詳細が現れて、時刻表はそれぞれPDFをダウンロード用リンクがある。
このページの下にある IDVROOM は、
カーシェアリングのマッチングサイトで、他に、blablacarなども、ポピュラー。
「ストライキ中に使用された方に、払い戻しあり」と書いてある。
自分のアカウントを作って、どこからどこまで、いくらで、誰の自動車に相乗り可能か、検索、予約ができる、国鉄( ! ! )が運営するサイトだ。
なお、払い戻しは、同サイトで将来使えるクレジット額としての払い戻しとなり、3月22日から6月28日まで、一人につき1日2便まで、一回80キロメートルまで、一台に三人まで、と条件もある。
格安TGVの ウィゴー OUIGOの場合は、
https://www.ouigo.com/horaires
の右上、INFO GREVE ストライキ情報 をクリックしよう。
出発駅と到着駅を入力して、FICHE HORAIRE 時刻表 を表示させるか、
右下に表示された日にちなら、出発駅と到着駅を入力、OUあるいは の下に、列車番号を 入力する。
さて、
====== 自分が買った切符の列車が欠便になったら?
自分の列車が運行されないとわかった場合は、便の変更か、取り消しをせざるを得ない。
国鉄によると、4月2日から4月29日の出発分について、以下の用意をしている。(5、6月の出発分については、後日発表される。)
TGVテージェヴェール か、従来線特急列車の INTERCITEアンテルシテなら、
どんな条件の切符であっても(割引の大きい切符は、通常変更が できなかったり、変更時に手数料がかかったりするが、ストライキ期間中は、この区別がないという意味)
国鉄のサイトの自分のアカウントで変更や取り消しができる。
https://www.oui.sncf/services-train/suivi-commande
ここに自分の名前と、予約番号を入力し、 変更l’échange か、取り消し l’annulation を行う。
地域圏急行列車 TERテーウーエール なら、
変更したい場合は、切符に書いてある有効初日から10日以内に可能。
取り消したい場合は、切符に書いてある有効初日から61日以内に手数料なしで払い戻し可能。
ただし、紙の切符は駅の窓口のみ。eチケットの場合は、その運行地域のTERのサイトでのみ、可能。
https://www.sncf.com/fr/offres-voyageurs/carte-et-tarifs-ter
スペイン、イタリア、ドイツ間の TGV LYRIA と、TGV INTERNATIONAL の場合は、
どんな切符でも、出発駅の窓口でのみ、往復の払い戻しが可能。
変更は、サイト上で、6月28日まで可能だが、切符の値段が高くなった場合は、差額負担が条件となる。
ベルギー、オランダ、ドイツ方面のTHALYS の場合は、
乗車した便が1時間以上遅れたら、どんな切符でも全額払い戻し。
手数料なし変更も可能。
英国へ行くEUROSTARの場合は、
乗車した便が運行されない場合は、サイト( Eurostar.com)で手数料なしで変更できる。
フランス国内TGVとセットになっている切符の場合と、取り消しおよび払い戻しを求めるなら、サービスセンターに電話 36 35 (有料 ) でのみ、対応するそうだ。
格安TGVの ウィゴー OUIGOの場合、
変更は、サイト内の自分のアカウントで、手数料無しで切符の変更 l’échange de votre billet を行える。
何もしないと、欠便が出発するはずだった日から7日後に払った料金は次回購入時に使えるマネーポイントで払い戻しになるが、返金してほしい場合は、このコンタクトページで払い戻し願いを送らないといけない。
Objet 内容 の欄は、
[Grèves 2018] Je ne souhaite plus voyager. Je demande le remboursement de mon voyage. =旅行を取りやめたいので、払い戻しを願う
を、選択すること。
=====
ストライキは、フランスの名物だと割り切ってほしいが、運行すると発表されても、車両の数も激減する可能性、バスで代行運転する可能性があり、何れにしても困難を強いられるかもしれない。旅程を変更できるなら、変更することをお勧めしたい。
代理案としては、レンタカーを自分で運転する、あるいは IDVROOM というマッチングサイトで利用できるカーシェアリングの車を見つける、または、時間はかかるが割安な長距離バスに乗り換えるという手もある(こちらも参照 ”激安の長距離バス利用 2018年4月再取材・再掲載。ただし、ストライキの影響で料金は高騰し、チケットが取りにくいとの情報も入っている。) ので、検討してはいかがだろう。
国鉄の労働者とは違う理由だが、反政府デモやストライキは、病院、学校、大学などでも同時に起きている。4月5日になって、エールフランスも、賃金アップを盾に4月7、10、11、17、 18、 23 、24日にストライキを予定すると発表した。 (フライトに影響があれば、チケット所持者には、電話にメッセージが入るはずだ。サイトでも確認できるhttps://www.airfrance.fr)
以下、ストライキの予定日(国鉄の発表は、五日のうち二日間のストライキだが、通常は前日19時からと、二日目の翌日8時までなので、表に付加した。)を記しておくので、向こう3ヶ月にフランスを旅行する予定のある方は、自分の予定と照らし合わせてみよう。
2018年 4月
2日19時から、3 、4、5日8時まで、===
7日19時から、8 、 9 、10日8時まで===
12日19時から、13、14、15日8時まで===
17日19時から、18 、19、20日8時まで===
22日19時から、23、24、25日8時まで===
27日19時から、28、29、30日8時まで、
5月
2日19時から、3 、4、5日8時まで、===
7日19時から、8 、 9 、10日8時まで===
12日19時から、13、14、15日8時まで===
17日19時から、18 、19、20日8時まで===
22日19時から、23、24、25日8時まで===
27日19時から、28、29、30日8時まで、
6月
1日19時から、2、3、4日8時まで===
6日19時から、7、8、9日8時まで===
11日19時から、12、13、14日8時まで===
16日19時から、17、18、19日8時まで===
21日19時から、22、23、24日8時まで===
26日19時から、27、28、 29日8時まで。
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