空間を切り取り、時空を超えてカラフルに動く彫刻、モビールの生みの親とピカソの談義が聞こえる・・・カルダー・ピカソ展は、パリ・ピカソ美術館にて2019年8月25日まで。

1898年フィラデルフィア生まれのアレクサンダー・カルダーは、自作の動く針金彫刻をサーカス仕立てにしたシリーズをトランクに詰め、芸術家になるべく1926年パリにやってきた。この『カルダーのサーカス』は、ジャン・コクトーはじめミロ、マルセル・ドュシャンなど、当時の前衛アーティストに絶賛され、芸術家の仲間入りを果たした。

1930年、カルダーは、三原色の四角が白い壁に並び、アトリエ全体が抽象芸術になっていたモンドリアンのアトリエを訪れ、抽象的な作品が動く芸術の形のインスピレーションを得たと自伝に書いている。1931年、パリのギャルリー・ペルシエで『ヴォリューム、ベクトル、濃縮』と題された個展を開催カルダーは、それぞれの作品の < 命 >の範囲で、振り子運動、つまり、瞬間的に現れる作品が物理的に変化を繰り返すことによってヴァリエーションを産む作品を発表した。カルダーは、立体アートに、《時限》を加え、全く新しい、四次元芸術を生み出したのだ。

1931年、カルダーのアトリエを訪ねたマルセル・ドュシャンは、彼のデリケートに動く彫刻を『モビール』と命名。また、1932年にはジャン・アルプが、動かない抽象彫刻を『スタビール』と命名した。1933年まで住んだ芸術の都で、カルダーのスタイルが確立された、と言えるだろう。

1931年の『ヴォリューム、ベクトル、濃縮』展のヴェルニサージュ(オープニング・パーティー)前に、カルダーに会いに来たのはピカソ。

「抽象芸術は、具象が完全単純化してしまう前にある、任意のポイント」(« En causant avec Picasso », L’Intransigeant, 15 juin 1932 一部意訳 )

「ご覧いただいているデッサンは、その物体の本質からこの形になったことを、私のスタイルで仕上げたかったものでは無い。これは単純に、その物体そのものの一部を表現しただけなのだ。」(« Midis avec Picasso », 1946,  Marie-Laure Bernadac et Androula Michael, Propos sur l’art / Picasso, Paris, Gallimard, 1998, 一部意訳)

というピカソと、

「私の芸術は、形と物体と動きの中で存在する、消滅という点に凝縮される。三角形だって球体。だが、違う形をした球体なんだ。」(« The Artist’s Voice. Talk with Seventeen Artists, New York », Katharine Kuh, Harper & Row, 1962,一部意訳)

というカルダー・・・

二人の芸術家は、抽象芸術について、あるいは形、それと対照となる世界、つまり空間について、そして、命について・・・お互いの理論を哲学者のように、時間を忘れて語り合ったに違いない。

・・・・・

こんな会話が聞こえて来そうなカルダー・ピカソ展は、ピカソ美術館にて2019年8月25日まで開催中。ここでは、カルダー初期のころの作品から、晩年の代表作、そして同時代のピカソの作品含めて、約120点が鑑賞できる。この夏、パリにいらっしゃる抽象アーティストには、絶対におすすめしたい、奥の深い企画展をお見逃しなく。

 

 

パリ・ピカソ美術館 公式サイト

http://www.museepicassoparis.fr

ちなみに、カルダーの高さ15メートルの赤い巨大スタビール『赤いクモ』は、メトロ1番終点ラ・デファンス、高層ビル街にあるので、この機会に行って見よう。この界隈には、69の現代アートが潜んでいる世界にも稀なオフィス街。以下のリンクから地図をダウンロードして、大きなスケールのアート散策も同時に楽しんでいただきたい。

https://parisladefenseartcollection.com/sites/all/themes/custom/defense/assets/pdf/map.pdf

 

 

Picasso_Calder_Affiche_BD

パリ・ピカソ美術館でのカルダー・ピカソ展は、2019年8月25日まで

 

61.46a-c.vw1

Alexander Calder
Big Red
1959
Tôle, fil de fer et peinture
188 x 290 cm
Whitney Museum of American Art, New York
© 2019 Calder Foundation, New York / ADAGP,

 

ART149219

La Grande vitesse (1:5 intermediate maquette). 1969. Sheet metal, bolts, and paint, 102″ x 135″ x 93″ (259.1 x 342.9 x 236.2 cm).Calder Foundation, New York
© 2019 Calder Foundation, New York / ADAGP, Pa

 

Alexander Calder Seven Black, Red and Blue [Sept noir, rouge et bleu] , 1947Alexander Calder Seven Black, Red and Blue [Sept noir, rouge et bleu] , 1947 2

Alexander Calder
Seven Black, Red and Blue
1947
Huile sur toile
121,9 x 153 cm
Calder Foundation, New York
© Calder Foundation, New York / Art Resource, NY
© 2019 Calder Foundation, New York / DACS, Lo

 

 

 

 

18-501848

Pablo Picasso
Nu couché
Boisgeloup, 4 avril 1932 Huile sur toile
130 x 162 cm
Musée national Picasso-Paris Dation, 1979
© RMN-Grand Palais / Adrien Didierjean © Succession Picasso 2019

 

カルダーのサーカス映像

Alexander Calder performs his “Circus” | Whitney Museum of American Art