20世紀半以降産まれてきたコンテンポラリーアートと呼ばれるものの中には、絵画や立体の画風やコンセプトがムーブメントになったもの以外に、それまでに無かった手法による芸術も、多々生まれてきた。ナム・ジュン・パイクなどによるヴィデオ・アートは1960年代で、70年代に入ると、3D写真のホログラフィーもアート界に登場した。プロジェクション・マッピング他、デジタル・アートが日常に溢れ出した今、観客が作品に近ずいたり触れたりしながら、その変化を楽しむインタラクティブ・アートは、進化するテクノロジーを土台に、あらゆる分野で応用される可能性を秘めた、芸術的表現の方法として、ますます一般的になっていくだろうと予想される。
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透明なプレキシガラスが格子状に組み合わされた立体に、物体が浮かび上がるような3Dアートを制作するGo Segawa(瀬川 剛)氏(以下敬称略)は、今、フランスで最も注目されるアーティストの一人だ。Go Segawaの作品に出会った人が、二度とその作品を忘れないのは、彼の作品が今までにない、〈何か新しいもの〉だからだろう。
彼の作品は、平面の絵画に奥行きを持たせる…のではなく、球体や物体が浮いているような絵を包括する立体アートだ。作品はまず、コンピューター・グラフィックスで制作される。それを縦割り、横割りした状態の〈物体の断面〉 を各プレキシガラスに描く(あるいはシルクスクリーンプリント、UVプリントする)。そして、それらを組み立てて作品が出来あがる。透明なプレキシガラスの作品に浮かび上がる、色を持つ〈形〉は、ホログラムを見るような不思議な気配をも醸し出しながら、上から、斜めから、横から…と、眺める角度によって表情を変え、生き生きと見る人に語りかける。デジタルで作品を描いた後に、あえてアナログで製作するからか、なぜかヒューマンで詩的でもある。特に初期の作品は筆で着色したものもあり、デジタルの世界にはほど遠い、画家の執着をも感じる。
「マチエール(質感)を追求した絵画ではない立体的な絵画」、「透明(物質)と不透明(絵の具)の融合」…正反対なものを併存させたような彼の作品に、アート界での新たなポジショニングが必要な気配だ。だが、彼には、関係なかろう。そういったアカデミー臭い〈アートのカテゴリー〉を超越したという証拠かもしれない。
1970年生まれ、日本、フランスのランス、レンヌ、パリの芸術大学でアート、テクノロジーを使ったアートなどを学んだ。現在、フランス西部24時間レースで有名なル・マン近郊の町、ラ・フェルテ・ベルナールにあるコミューン共同公営文化センターLA LAVERIE(キュレーターはJulien RULLIER氏)にて、約60点を一堂に鑑賞できる個展が2020年11月27日まで開催中(追記/コロナ感染症対策として、この最終日を待たずに、閉展となりました)


マスク姿のGo Segawa 氏